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傘寿も過ぎ気力・体力不足に悩む日々。旅もスキーも年貢の納め時かも。まだ少し残っている知力・気力・体力を使い何をしょうか?

剣岳 (2/3 ) 2013-08-08 (木 ) 晴れ [山行記録2013年]


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 3時半頃、周りが騒々しくなってきたので起きた。大半が別山尾根経由で釼岳登頂を目指すようだ。あたしも起きたけれど身体がだるいし眠い。周りのいびきも気になったし、疲れ過ぎのためか良く眠れなかった。これも歳のせいかも。結局、4時半過ぎに出発する。

 ヘッドランプを照らし剣沢方向に踏み跡を辿る。この時間、剣沢を下降するのはあたし一人だけのようだ。暫く、沢沿いに下降する。雪渓が現れたのでここで休憩。夜も明けてきたのでアイゼンを付ける。早朝の雪渓は固い。日中に解けて固まったところは氷の板になっている。明るくなってきたので快調に下降。両岸の岩壁から落ちてくるのか、大小の岩が雪渓上に転がっている。ヘルメットは被っているが気休めだね。時々、左右と後ろを確認しながら下降する。

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 平蔵谷雪渓の出合いだ。手前に大きな岩があるので分かり易い。出合いから見れば大した傾斜ではないが上部は40度以上はあるはずだ。帰路の下降ルートに予定しているが状態は良さそうだ。

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 平蔵谷雪渓出合いから15分ほどで今日のルートとなる長次郎谷雪渓の出合いに到着。八ツ峯主稜側からの落石に要注意。安全上、一気に通過したい所だね。

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 長次郎谷雪渓出合いから剣沢雪渓を仰ぎ見る。明るくて幅が広く壮大なスケールだ。

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 長次郎谷雪渓を少し登ると、はるか彼方に右股のコルが見えた。登山者を見かけるが殆どは八ツ峯六峯のクライマーだろう。
落石の危険地帯を抜けたところで大休憩。小屋で作ってもらった朝の弁当を食べる。塩サケ、塩コブなど入った簡単な弁当だが大変旨かった。周りのアルパイン的な景観も影響しているかもしれない。

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 熊ノ岩(右正面)が眼前に迫ってきた。左股はクレバスも無く通過可能と思われるが、ラントクルフト(雪渓と岩との隙間)が大きいので崩落の危険がありそう。セオリー通り右股から熊ノ岩に登り左股上部に下降することにした。長次郎谷の上部はガスに覆われ少し嫌な感じ。

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 六峯のA、B、C、Dフェイスだが看る方向により形が違う。Dフェイスの後ろにEフェイスが隠れている。やはり、熊ノ岩の上から眺めるのが一番。
8時頃、熊ノ岩到着。ここでも大休憩。熊ノ岩の台地にはテントが一つ。後続のパーティが今、テントを設営し始めた。三、四張りは設営出来そうな広さは有る。雪上を含めるともっと張れそうだ。
ここは六峯フェイス、八ツ峯主稜上半縦走等の登攀基地として最適だね。六峯の眺めが素晴らしい。ガスの切れ間に写真をパチパチ。

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 右から五・六のキレット、A、B、Cフェイス。

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 右からC、D、Eフェイス、六・七峯間のルンゼ。

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 Aフェイス基部を登っているクライマーだがBかCのフェイスに向かっているようだ。六峯のフェイス群に近づくと圧倒的なスケールに驚く。クライマーがけし粒のようだ。このあたりのスケール感は国内山岳でも屈指のものだろう。

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 Aフェイスの中央大ルートと魚津高ルートを登っている。昔、T君と登ったが、易しいけれどホールドが細かくて緊張したものだ。Cフェイスの剣陵会ルートにも取り付いている。途中で話を交わしたTN大山岳部の若者たちだ。

 この界隈で一番快適なクライミングを感じるのは、やっぱりCフェイスだろうと思う。傾斜が緩い割りに高度感が得られハングも無く易しい。多分、今のあたしでも一人で登攀できると思うが、完登したところで年寄りの冷や水と笑われるだけ。CフェイスはDフェイスと比べると難易度が格段に落ちるので新人の訓練に最適。

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 六・七峯間のルンゼだが、あまり利用されてないはずだ。また七峯もスケールが小さいため、昔はクライミングの対象にはなってなかったはずだ。

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 あまりにも懐かしかったのでつい時間を費やしてしまった。熊ノ岩の台地から長次郎谷左股に入る。途中、幅30cm程の亀裂が縦方向に走っていた。隙間がブルーアイスになっていて不気味だった。写真を撮ろうと思ったが、すぐ真下に、両側が大きなラントクルフトになっている左股の漏斗部分があるので断念して早々に通過。でも不思議な亀裂だったなぁ~。

 この辺りは傾斜も強く下がスッパリと切れ落ちているので気持ちが良い。熊ノ岩まではストック2本使っていたが、ここからはピッケルだ。雪が柔らかいのでピッケルさえあればアイゼンは不要かも。
あたしは12本爪仕様だがね。(へ_へ;) 

 ここからは完全に独りだ。皆、八ツ峯主稜か六峯に行った。左股を詰める物好きはあたしだけ。物音一つ聞こえない。ガスが流れて不気味な静寂が漂う。

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 右岸の本峯北壁寄りに多数のクレバスあり。出来るだけ左岸寄りを登るが、時々、ガスで視界を奪われる。

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 ようやくコル直下だ。ガスも晴れて素晴らしい景観だ。あちらこちらにクレバスが走っている。雪渓も大きく波打っているように見える。八月末頃には雪渓がズタズタになり通過困難となる。ラントクルフトの中を登ることになるが、それなりの危険はある。

 右岸は本峯北壁になるが、この時期、クレバスやラントクルフトで取り付き困難だろう。もっとも、最近、本峯北壁や南壁は登攀対象になってないのかも知れない。あたしは浦島太郎だもんね。

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 クレバスを避けながら右側急斜面を登って行くと、あっけなくコルに飛び出た。長次郎谷左股のコルだ。9時50分到着。熊ノ岩から約80分だ。途中、ザックを降ろして休めるような場所が無かったのでチカレタァ~~。

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 源次郎尾根Ⅱ峯だ。主稜縦走で唯一のザイル使用地点だ。懸垂下降約30メーター。このアップザイレンさえなければ独りで行けるバリエーションルートに加えるのだが。ザイル持って登れる体力無いし、独りでの懸垂下降は怖ろしい・・・。今も、上に一名、下に二名のクライマーが見える。拍手喝采だ。

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 池ノ谷側を覗く。怖ろしいほどスッパリと切れ落ちている。
クワバラ・桑原だ。

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 右に長次郎の頭。三ノ窓に行くには長次郎谷側を巻く。

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 左が釼岳本峯へのルート。さて、どこから登るかだが・・・。まずは大休憩。アイゼンを外し、ピッケルもザックに固定し岩登り体勢に変身。出だし、少し強引に登ったところもあったが踏み跡らしきものも出てきた。ただ、岩場は何処でも登れそうなので要注意だ。このような岩稜は大好きだ。もっとも、嫌いな人はこのような素晴らしいところには来られないのでお気の毒。

 ここは北方稜線の一部なので標識も岩のペイントマークも鎖、ロープ等、人工物は一切無い。自然のままなのだ。大昔、三ノ窓と釼岳本峯間は二度往復しているが、全て忘却の彼方なので新鮮な気持ちで登れる。

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 頂上直下の雪田だ。もうすぐ頂上なので急ぐことは無い。
また、また、大休憩。

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 長次郎谷雪渓の右股だ。上部に大きなクレバスが走っているがまだ大丈夫、登れる。ただ、左股より傾斜が強いので慎重に登ることだ。頭の記憶では左股40度、右股45度となっている。スキーの上級斜面より少し手強いかも。八ツ峰の頭周辺の地形は複雑だ。 この辺りは釼岳山頂からの景色と違い迫力満点。

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 雪田の基部から立山方面を遠望。

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 ↑ クリックで画像拡大できます。
雪田を過ぎ、適当にどんどん登ると頂上直下の台地に出た。ここからの景色も圧巻・絶景・コメントなぁ~~し。頂上直下の雪田、長次郎の頭、池ノ谷乗越、八ツ峯の頭、、長次郎谷の右股左股、六峯フェイス群、八ツ峯主稜、熊ノ岩、源次郎尾根Ⅱ峯・・・しっかりとコメントしてしまった。 (^o^)

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 見上げると釼岳の頂上だ、登山者の姿も見える。適当に登って行くと、途中の岩陰に立派な新しいアックスが2本隠されていた。クライマー達が残したものだろうが、もう少し上手く隠せよと言いたくなる。まぁ~~、持ち去るような不届き者はいないと思うが・・・。

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 釼岳山頂 11時10分。熊ノ岩から山頂まで誰にも会わなかった。静かな登山を楽しめ幸せ一杯。多少の不安はあるが独りでのバリエーションは最高だ。

 昨日、剣澤小屋の小屋番さんから山頂に着いたら安全確認の為、電話を入れてくれと言われていた。無事に着いたと報告。ヨタヨタの年寄りだから気懸りなのかも・・・クシュン・ありがとう。剣澤小屋はドコモの衛星携帯だからドコモなら、どこからでも連絡出来て便利だ。圏外が多い地域だけにありがたい。事故っても携帯で連絡できるとなれば心強い。
まぁ~、意識があればの話だけれど・・・。(・_・;)

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DSC_5778.jpg 長次郎谷雪渓の上空をヘリが旋回している。先ほど、雪渓上部を登っていたときにも頭上を旋回していた。迂闊にピッケルでも振ろうものなら救援要請と間違えられる。クライマーが入る領域なのでパトロールかも。



 山頂でザイルを肩に担いだ方がいたので「何処からですか?」と聞いたら、「源次郎尾根です」 思った通りだった。独りでザイル担いで登ったり、降りたり・・・スゴイ人もいるものだ。久し振りに共感できる人と会ったので嬉しかった。剣沢のテント泊というので一緒に下山したが、色々と参考になるお話を聞けて楽しかった。あたしより六つ若いがタフだねぇ~。テント担いで独りで入山するんだからスゴイ。

 お名前はMさん。愛知県の方だ。独りでのバリエーションは止めたほうが良いなどと下手な説法をしてしまったが、ゴメンナサイ。

 久し振りの自分の写真をアップ。
あたしもMさんだが、くたびれた爺だねぇ~。
不服老不行。哎呀 没办法!

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 登山者が少ないので20分ほどで平蔵谷のコルまで降りて来た。Mさんと相談の結果、このまま別山尾根一般ルートを下ることにした。平蔵雪渓の状態は長次郎よりよさそうだが、剣沢出合いから小屋まで1時間半以上の登りを考えると二の足を踏んでしまう。時間的には同じようなものだけれど、楽な雪渓下りの後の登りはキツイ。勿論、グリセードや尻セードの魅力は捨てがたいのだが、一般ルートで気楽な下山も良いものだ。Mさんも同じ考えのようだ。

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 東大谷への降り口だ。昔、先輩の古参部員達がせっせと通っていた。谷筋が複雑で雪渓もクレバスだらけ、落石も頻繁。駒草ルンゼでハーケンが抜けて墜落し、県警の救助隊のお世話になった先輩もいた。その先輩も数年後、アラスカ遠征で死んだ。ちょっと感傷的になる場所だ。

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 ライチョウだ。傍に寄っても逃げない。癒される。三時半頃、剣澤小屋に到着。山頂から約3時間掛かった。Mさんと色々と喋りながら下ったので退屈しなかった。のんびりしていたとは言え、12時間の行動だからキツイ。少しバテた。やはり釼はデカイ。久し振りの達成感・・・充実した一日だった。お天気も良かったし、良い出会いもあり、感謝・感謝の一日でもあった。



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